(A) of Hearts
「飲まないの?」
「なんか胃痛です」
「アルコール入れたら治るよ」
「——てか、友香さん。児島さんと喧嘩してるからって、わたしにまであたらないでくださいよ」
一日の業務を終え、会社の近くにある居酒屋で晩酌中。ただいま児島さんと喧嘩中の友香さんと一緒。
「だってアイツ信じられない。普通ホワイトシチューは鶏肉でしょ? それなのにアイツったら、実家はいつも豚肉だったってほざくんだもん信じらんない」
「あはは」
「シチューは鶏肉だよね?」
「うちの実家は、そうでした」
「だよねー」
あ、実家といえば。
バタバタして忘れていたけれど、あとで実家に連絡してヒロの苗字を聞いてみよう。
すると突然わたしの携帯が鳴った。
確認すれば、なんと部長だ。
「どうしたの?」
「部長から着信」
「早く出なよ」
言われなくても出るけどさ。
だけどなんか、嫌な予感がするんだもん。
おそらく芦沢さんの返答結果だろうし。