(A) of Hearts
そして鳴らない携帯。
そもそも着信できるのかな?
発信は出来たけれど着信できないんじゃ?
可能性は大いにアリ。
「うっくらしょっと」
仕事用の携帯からプライベートのほうの携帯へ掛けてみることにした。すると軽快な着信音が鳴り響く。
「だよね」
うん。
普通に繋がるよ。
ちょっとぐらい音が途切れるとか着信したら切れてしまうとかさ? そんなワクワクでドキドキなイベントぐらい、あったっていいじゃんか。
だって誕生日なんだし。
もう過ぎたっての。
そして時計に目をやった。1時をとっくに回っている。
「お風呂でも入ろーっと」
さっさと寝よう。
それに限る。
バスルームに向かい湯気立つ空気に包み込まれた。
「はあー…」
生き返るよ。
べつに死んでないけどさ。
今日も終わりだ。
そして目を閉じた。
だけど——、
「!!?」
なんか音が。
ま、まさか電話鳴ってる?
湯船から慌てて飛び出し、バスタオルを片手に携帯を手に取った。
着信中
芦沢さん