(A) of Hearts

「——うそ」


待って。
だって着信!!?


「こんばんは館野です」

『芦沢だけど』

「おつかれさまです」

『遅くに悪いな。メール読んだ』

「あ、はい!今日は本当に申し訳ありません」


だけどビックリ!
まさかのまさかだし。


『いま家か?』

「はい!」

『そうか』


そして息を吐き出す気配。
煙草を吸ってるのかもしれない。

もう家に着いたのかな。


「もしもし?」

『なんだ』


用件はなんだろう?
なにもないのに電話なんてありえないし…。


「あの。大丈夫なのでしょうか?」

『なにが』

「ご自宅ですよね?」


芦沢さんも自宅に着いているはずだ。
婚約者のアヤさんが帰りを待っていたであろう場所に。


『なんで、そんなことを聞く』


なんでって。
そんなこと言われても困る。
言葉に詰まってしまった。

それにさっきこれ系の話題でタクシーを降りることになったのだ。懲りないな、わたしも。

だけどさ?
こんな時間に電話だしさー。
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