(A) of Hearts
うわわわ。
切れてしまったよ。
しかも部屋番号いっちゃった。
「——どうすんの」
てか、まず服!
それから、ええっと。
「ひっっ」
チャイムが鳴ったよ!?
マジですか!???
ちょっと待ってくださいっっ!
「せせせ専務ですか!?」
「遅くに悪い」
「少々お待ちください…っ」
汗が吹き出してしまう!さっきまで寒かったのにっ!
ひとまずバッテリーが切れた携帯を充電しよう。それから…っ!
下の階の人に怒られちゃうんじゃないかと思うぐらい世話しなく動き周ったあと部屋を見渡す。
だけど中に入ってもらうの?
どうすれば…。
「お待たせいたしました」
いつもと同じ感じで扉を開ければ、そこにいつもとは違う見慣れない風景があるカオス。
だって芦沢さんがいる。わたしの家の前に。ありえない…。
「すぐ出るべきなのに申し訳ありません」
「いや、ゴッホゴホ。連絡なしに来た俺のほうが非常識極まりないから。ゴッホ」
咳き込んでる。
まだまだハードワークが続くのに。
「——あ、あの。お話って、なんでしょうか? あ、部屋散らかっていますけれど、どうぞ中へお入りください」
ああ、いってしまった。
だけど玄関口で立ち話をするのもなんだし。
するとわたしの顔を見て、まるで疎い人でも見るかのように目を細めた芦沢さん。