(A) of Hearts
♧♧♧♧♧♧
煙草を吸わないはずのキミなのに灰皿がある部屋。
さらにはこんな深夜、突然の訪問にもかかわらず、無防備にも家に上げる髪が濡れたキミ。
そして藤崎からの電話。
『てか、待ってくださいよ。なんでわたしの好きな人が専務なんですか? ビックリしちゃいました』
そう話すキミは少し引きつりながらも、それを声色に乗せることなく。明るい口調で話し、そして静かに涙を零した。
「はあ……」
あまり俺を苛めるな。
そう言いたい。
とてもじゃないが、そんなことなんて言える立場じゃないけれど。
だからごめん。
「婚約者か…」
彼女のことを捨てるのは無理だ。
会社のためにも、それから前田のためにも…。
♧♧♧♧♧♧