(A) of Hearts

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煙草を吸わないはずのキミなのに灰皿がある部屋。

さらにはこんな深夜、突然の訪問にもかかわらず、無防備にも家に上げる髪が濡れたキミ。

そして藤崎からの電話。


『てか、待ってくださいよ。なんでわたしの好きな人が専務なんですか? ビックリしちゃいました』


そう話すキミは少し引きつりながらも、それを声色に乗せることなく。明るい口調で話し、そして静かに涙を零した。


「はあ……」


あまり俺を苛めるな。
そう言いたい。

とてもじゃないが、そんなことなんて言える立場じゃないけれど。

だからごめん。


「婚約者か…」


彼女のことを捨てるのは無理だ。
会社のためにも、それから前田のためにも…。


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