(A) of Hearts

だけどこんなふうに頭の中の回線がブッ飛んでしまうのは現実逃避というか、なんというか。

だって仕方ないじゃん?

この会議が中断するなら、いつスケジュールを空ければいいのだろう、とか。でもそれは、もうやらなくてもいいことになるかもしれないし…とか。

それからさ。
体調は大丈夫なのか。
どんな顔して会えばいいのか。
とかとかとか。

なんて声を掛けよう。


「——はあ」


だけどなんなの?
だいたいなんで体調も悪かった昨日なんかに、わざわざあんなこと伝えにくるかな。

そんな一刻を争う事態だったわけ?
そこまで急ぎでわたしを辞めさせたかった?

あったまくる!
ほんとさ!
体調管理ぐらいしっかりしろ!!!


「……」


もうやだ。
なんか泣けるよ。
あれから涙は引っ込んでたのに。


「おはようございます!」


休日専用の入口から入り警備員に社員証を見せた。
いつも賑やかなオフィスはガランとしている。

天窓から差し込む光だけで薄暗い。
見慣れた風景なのに、なんだか知らない場所みたい。

いつもは受付にいるはずの友香さんも今日はもちろんいないしさ。

さてと、


「……」


ちょっと待って。
やっぱり深呼吸。

そして専務室のドアをノックした。
緊張するよ。

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