(A) of Hearts
『——もしもし』
「!!?」
『聞こえますか? 芦沢ですけれども』
な、なんと。
思わず携帯を持ち替えてしまった。
「き、聞こえます!」
『じつはこれから丁度、部長と飲みに出かけるところなのです。よければそちらへご挨拶を兼ねてお伺いしたいのですが、よろしいですか?』
「ええ!?」
専務自ら挨拶をしに、ここまでくると??
無理無理無理無理、そんなの絶対無理。
そんな大それたことを一端のわたしができるわけないじゃんか!!だけど友香さんに目をやれば手鏡を取り出してメイクを直してる。
『もしもし?』
「——あの、せっかくお声を掛けていただいたのに申し訳ありません。じつは今日ガールズトークの日なもので——、」
行間というか、空気を読んで。
『そうですか。いえいえ、こちらこそ急でしたし』
「——イッ」
痛いじゃん!!!
友香さんの鋭いパンチが一発、わたしの右肩にゴツンと飛んできた。
"なにするんですか!"
口パクでそう伝えるも睨まれる。
そして顔の前でパチンと手を合わせる友香さん。
お・ね・が・い
どうやらここへ呼べとのこと。投げキッスまでプレゼントしてくれた。