(A) of Hearts

♧♧♧♧♧♧


熱のせいなのか。
いや、熱だけのせいじゃない。

どうやらキミと一緒だと、さらに上がってしまう。

これは過去の秘めた想いを、ただ懐かしんでいるだけなのか。何度もそう思った。
——だけど違う。

それに気づいてしまったからこそ、秘書を辞めてもらおうと考えた思慮の浅い俺。

焦ってしまった。
創り上げてきたいまを、無駄にはしたくないから。

それに再会したいだなんて、これまで一度たりとも願ったことはない。いや、思ってもいなかった。


「驚かせないでくださいよ。なんかちょっと心臓によくないです」

「我儘を言うからだろ」

「特許とりますよ」

「どうぞー。どうぞどうぞ」


なのに俺の言葉にクルクルと表情を変えるキミを、こんなふうにからかうのが楽しくて仕方ない。


「ガキ」

「なにがでしょうか!?」

「あ、こっちの話」


どうにかしてくれよ。
自分に呆れる。

いくら会社や前田のことがあるにしろ、彩矢を嫌いになったわけでないのに。


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