(A) of Hearts
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熱のせいなのか。
いや、熱だけのせいじゃない。
どうやらキミと一緒だと、さらに上がってしまう。
これは過去の秘めた想いを、ただ懐かしんでいるだけなのか。何度もそう思った。
——だけど違う。
それに気づいてしまったからこそ、秘書を辞めてもらおうと考えた思慮の浅い俺。
焦ってしまった。
創り上げてきたいまを、無駄にはしたくないから。
それに再会したいだなんて、これまで一度たりとも願ったことはない。いや、思ってもいなかった。
「驚かせないでくださいよ。なんかちょっと心臓によくないです」
「我儘を言うからだろ」
「特許とりますよ」
「どうぞー。どうぞどうぞ」
なのに俺の言葉にクルクルと表情を変えるキミを、こんなふうにからかうのが楽しくて仕方ない。
「ガキ」
「なにがでしょうか!?」
「あ、こっちの話」
どうにかしてくれよ。
自分に呆れる。
いくら会社や前田のことがあるにしろ、彩矢を嫌いになったわけでないのに。
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