(A) of Hearts
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「ところで専務。もうここで結構です」
「送るよ」
「駄目です」
こんなふうに出てきてしまったことを、帰ったらなんていいわけをしようか。
前田が彼女を不安にさせることを、わざわざ口にすることはないので大丈夫だとは思うが。
だけどひょっとしたら、なにかの拍子に彼女がこの一件を耳にするかもしれない。さきに俺から言っておいたほうがいいかもな。
「ご迷惑をおかけしました」
「いや、館野は悪くないだろ。悪いのは———」
「前田さまですよね」
いや、間違いなく俺だ。
わかっている。
前田がここまでやる理由も。
「水を掛けた行為のみ。だけどあんなことは、なかなか出来るもんじゃない」
おかげで目が覚めた気分。
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