(A) of Hearts
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あの前田が。
いやだけど、あの前田だからなのか。
あいつの言葉のあと泣き笑いをするキミに、やるせない気持ちになってしまった。
「——専務」
「なんだ」
「あのですね? じつは今日わたし、ほんとは友香さんと飲むはずだったのです」
友香って誰だっけ。
四條のことだったか?
「そうか」
「乾杯いたしましょう!」
な、なんだ?
なぜ急に。
「ほら専務」
「おお」
「館野、飲みます!」
「待て」
「なぜでしょう?」
「飲みすぎるなよ?」
「もちろんです!」
ホントかよ。
いますぐ秘書を辞めさせたほうがいいのかもしれない。このままでは俺のほうが前田より突っ走ってしまいそうじゃないか。
そんな身じゃないのに。
それに俺が幸せにしたいと思っているのはキミじゃない。
「——来月は結婚式ですね? どのようなドレスですか? どのタイプのドレスでも、きっとお似合いでしょうね」
「どうも」
「いまのは専務を褒めたわけじゃないです」
「当然だろ」
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