(A) of Hearts
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前田さんが去り注文を終える。
れんこん饅頭には無事にありつけそうだ。——と、ほっとしている場合などではない。
だけど一気に体力を奪われてしまったというか、このまま本当に倒れてしまうんじゃないかと思ったことははじめてだ。
芦沢さんがなんとか収めてくれたけれど、あのまま同席していたらどうなっていたかと思う。
やっぱりさ。
素敵だな芦沢さんてさ。
婚約者が羨ましいなあ。
「……」
おっと。
危険な思考が沸々と…。
これもすべて前田、あんたのせいだっっ!!
「――来月は結婚式ですね? どのようなドレスですか? どのタイプのドレスでも、きっとお似合いでしょうね」
「どうも」
「いまのは専務を褒めたわけじゃないです」
「当然だろ」
来月には結婚する芦沢さん。
チビのわたしと違って、スラッと背の高いアヤさんなら、どんなドレスでも似合いそう。
まあ、わたしと比べるなって話だよね。
「もう大丈夫なのか? まあ顔色は良くなったが」
「突然の出来事で驚いてしまい申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました。いまは自分でも驚くほど回復しています」
ほんとさ。これまでの人生で一番衝撃的だったよ。