(A) of Hearts

「もちろん」

「わたしの名前覚えてくださってます?」

「四條さんですよね?」

「そうです!四條友香でーす!!」


友香さんの声に、わたしの肩が少し揺れる。

真横過ぎて見えないけれど芦沢さんが笑ったようだ。もしかすると気さくな人なのかも。


「芦沢さんのお名前。あの字はなんとお読みすればいいのですか?」


あ。そういえば。
まだ苗字しか知らないや。
こんなんで大丈夫かな…。やっていけるか心配だよ。


「拓武(ひろむ)です」

「ひろむさんとお読みするのですね」


ヒロム。
ヒロ。


「……」


まさかね。
はじめて見たときは一瞬ヒロかとも思ったけれど、いまはそんなの微塵たりも。

それにもし芦沢さんがヒロならば、わたしと会ったとき、こんな態度じゃないはず。

ましてや、わたしに秘書なんてさせるはずがないと言い切れる。


「館野さん?」


すると芦沢さん。


「おかわりもビールでいいですか?」

「へ?」


ぬ、ぬあっ!
いつのまにか飲み干していた。
やばい芦沢さんのジョッキもほとんど空っぽじゃん!

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