(A) of Hearts
ディール


♡♡♡♡♡♡


わたしの目を見て"キスするぞ" と眉を寄せた芦沢さんは、その後にもっと驚くことを発言したので耳を疑った。

酔ってないと思う。
風邪も引いていないはず。


『ヒロは館野のことが好きだった。我慢できないほど欲情してしまった。だから館野が寝た布団は干すほど臭くなるから寝れない、大嫌い。と言った』


やっぱりヒロかもって思った。
だって干すほど臭くなるとかまでいってない。

とはいえ、まさかヒロなわけないないのにって思い直す。これでもう何回目だろう…

だけど、どうやら寝言。
だったら大阪のときに言っちゃったのかな。


「——ですが専務」

「なんだ」

「もし、専務がおっしゃった通りなら嬉しいです。じつはわたしヒロが好きだったんですよ」


サラッと言ったけれど、こんなことを誰かに言う日が来るだなんて思ってもいなかった。

なんか緊張する。
こんなのいまさらながらの告白だし、それに本人相手じゃないんだけれど。口にしただけでドキドキしていた。

だけどそれは芦沢さんがヒロとか呼ばれてるから、ややこしいんじゃんか。


「——あのさ、」

「失礼いたします」


芦沢さんの言葉を遮るかのように襖が開いて料理が運ばれてきた。

いま天使が通ったよ。
これってフランスの諺だったかな。
なんてことを思いつつ、テーブルの上に運ばれてきたれんこん饅頭から目が離せない。

せっかく向こう側に移ろうと思っていたのに、目の前に料理が並べられてしまった。

だけど食べるとき前に芦沢さんがいるより、こっちのほうがいいかも? どっちかな。

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