(A) of Hearts
「やめてください。からかわないでください」
「やめないし、からかってない。辞めなきゃいけないのは、やっぱり秘書だな」
「せ、専務!!」
「なんだよ」
「……」
なんでよ。
だってわたし何回も訊いたのに。
それなのに、どうしていまさらなの?
こんなの反則。
てかなんかムカつくんですけれど!?
てか信じられない。
「館野」
「お忘れですか? わたしは、ちぃです」
「怒るなよ」
「怒ってはおりません。悔しいだけです」
「それなら、こっち向いて」
「……無理です」
「キスするぞ?」
は、はあ??
「ど、どうぞ!?」
「本当にするぞ?」
「三度目は、それなりの覚悟が必要かと思いますけれど?」
できるものなら、やってみればいい。
心臓はバクバクしてるけど、そんなの意地でも隠してやるんだから。
てかもう、なにに対してこんなにムカついてるのか、わからなくなってくる。
わたしひとりテンパってる!
「覚悟とは?」
「わたしは、したくありません」
「それでいい」
そしてわたしの頭を撫でた芦沢さん。
キスはしていないけれど、かなりの至近距離に内心はドキドキしてる。
「本当にヒロなのでしょうか?」
「うん」
「——うそでしょ」
「ちぃは臭くないから。ごめんな」
「なんで、」
なんなの。
わたしヒロの嘘にずっと騙されてたの?