(A) of Hearts
「す、すみません!こんなのわたしが気づくべきことなのに。ほんとごめんなさい」
「ついでですよ。ビールでいいですか?」
「——はい」
ヒロのはずがない。
だってわたしはヒロに嫌われていた。
それも心底。
「どうされました?」
「あ、いえ。なんか芦沢さんが、わたしの知り合いに似ているなと思って」
わたしが帰国することが決まったのも知っていたはずなのに、見送りにも来てくれなかったヒロと少し。
「まあ、よくある顔ですから。ですが館野さんのお知り合いの方に似ているだなんて光栄ですね」
「アハハハハハハ」
はあ。
なんだかな。
「芦沢さん、お部屋はもう決まりましたか?」
「ええ」
友香さんの隣には部長。
ちょっと笑える構図。
だけど頼れる友香さんは、それからなんだかんだと話題を取り上げ、どんどん話を広げてくれたので助かった。きっと友香さんのほうが秘書に向いてるよね。
だからもしかすると、明日になればこの話も友香さんに代わっているかもねえ——…。