(A) of Hearts
「好きです」
「は?」
「わたし専務が好きです。アヤさんから奪ってもいいですか?」
「——な?」
「奪いますよ?」
「前田に感化された?」
「違います」
「好きな人がいるって話はどこに?」
「それは専務のことです」
「……待て」
「どうされました?」
「ちょっと待て」
「どうしてです?」
だってこうでもしないと。
気持ちが収まってくれないんだもん。
婚約者がいて、わたしの上司で。
それが目の前にいる人なのは変わっていない。なのに、やっぱりわたしの知っているヒロでした。なんて。
いままでのわたしの努力は一体なんだったの?
「わたし会社辞めます。いつもの専務に戻ってください」
胸がギュウギュウうるさくて。
いまにも泣きそうで。
駄目だ。
前田さんの言葉を思い出してしまった。
わたしが専務を駄目にするって。