(A) of Hearts

「失礼ながら申し上げますが、日曜日にお会いすれば本当にこのような電話をなくしていただけるのでしょうか?」

『嘘はつかないっていってるだろ』

「申し訳ございません」

『ま、厳密にいえば掛ける必要がなくなるんだけど。館野さんのほうから俺に電話したくなるからね』

「!!??」


ど、どんだけ!
だけどわたしのほうから電話をするだなんて考えられないし、ここはもう素直に折れることしにした。

そんなペースが掴めない前田さんとの電話を切り、時計を確認すればそろそろ出る時間。

前田さんがなにを企んでいるのかわからないけれど、下手に突っ込んで聞くと話が長くなるから敢えてなにもいわなかった。

だいたいさ?
忙しいというわりに暇そうなんだよね。空いているわたしもどうかと思うけれど。

だけど秘書になってからというものの、慣れるまでは休日はしっかり休んでおきたいから予定は入れないようにしていた。だからそれはそれでいいのだけれど、二回とも前田さん絡みで潰れているよ。


「はあ……」


そういえば前田さんは"ちぃ"について、どこまで知っているのかな。わたしと前田さんは向こうで顔を合わせたことがないはず。当時ヒロの友だちを何人か把握していたけれど、その中に前田さんらしき人はいないし。

それもそうだけれど、いろいろ気が重いよ。
前田さんの件もあるけれど、芦沢さんとどんな顔で会えばいいの。

だけどあれこれ考えていても劇的になにかが変わるわけでもない。なので早々に家を出ることにする。いつもより少し早めの電車に乗り込んだ。

受付をやっていたころは始業に間に合えばいいというスタンスだったけれど、秘書になってからはそうもいっていられず。芦沢さんが来る前に準備を整えておく必要があるから8時には着くようにしていた。けれど今日はそれよりも早い時間だ。

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