(A) of Hearts
「ビンゴ」
「今回のM&Aにも絡んできますか?」
「それじゃあ、大した能力もない俺が、ここに立つことが出来るのは何故だと思う?」
「それは実力です」
「そんなわけないだろ」
「ですが、」
「むこうと話せるのが俺しかいなかっただけ」
「それはないと思います…っ!」
「なにを根拠に?」
「それは…」
芦沢さんは、本当によくやっていると思う。
まだ秘書をはじめたばかりだけれど、それはよくわかる。
本来はわたしがやるべきであろうデータ化されていない書類まで持ち込んだり、社員全員と面談をしたり。
「俺が苗字変わったのって両親が離婚したからなんだけど。親父が再婚したのは前田のお姉さんってのもあってさ。前田の差し金で俺に回ってきたと思っている」
そしてトンっと指さした名前。
如月拓斗(きさらぎ たくと)
「これ、親父だから」
「え……」
そういえばママにヒロの苗字を聞いたとき如月といっていた。
つまりはどういうこと?
「俺個人としては、前田のところと新会社を設立を狙っている」
「前田さまも、それはご存知なのでしょうか?」
「あいつの提案がキッカケだからな」
「……」
ちょっと待ってよ。
その人と日曜に会う約束をしたけれど、それも関係したりしないよね?
何者なの前田さん。