(A) of Hearts

「芦沢とはそれからのお付き合いでしょうか?」

「なんだあいつ。俺の話全然してないの? 酷いなあ。中学からの付き合いなのに」

「失礼ですが前田さまはおいくつでいらっしゃいますか?」

「学年はヒロのひとつ下だよ」

「そうなのですか?」

「あっちではね。こっちだと同学年だけどさ。だからヒロって、なーんか俺に偉そうなんだよねえ。こっちで知り合ってたら変わらないのに」


そうこう話しているうちに会場へ着く。
コンサートなども執り行われる大きなホールで、大学時代などは何度か足を運んだことがある場所だ。友だちと一緒に出待ちをしたこともあった。


「わたしが入っても構わないのでしょうか?」

「挨拶するだけだし」


会場の入り口を素通りして関係者のほうから入っていく不思議な感覚に足取りがフワついて仕方ない。


「アツ!!!!!」


バタバタとひとりの女性が駆け寄ってくる。


「来てくれたんだ?」

「そんなの当然。日本ではじめてお披露目イベントだろ? 俺が来なくてどうするんだって話」

「サンキュー」


いかにも業界人っぽい雰囲気の女性は、ひっつめた髪はピシッと決まっているけれど、服装まで手が回らないという感じ。あちこちメイクの汚れのようなものがついていた。


「あら可愛い子」

「は、はじめまして。こんにちは」

「なにこの子?」

「お邪魔して申し訳ございません」


ちょっと圧倒。
というかビビる。
目力が凄いというか初対面の人からここまでまじまじと顔を覗き込まれたことがない。


「ちっさ!!」

「えっ、」

「ちょっとマキ!ラストのドレスこの子に着させて!!」

「え……?」

「早く支度して」

「ええええ!!?」

「お願い!」

「ええええええええ???」


ななななななにごと?
なんなの!?
なにが起こった??


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