(A) of Hearts

「ままま前田さま!!」

「俺のこと?」

「そうです!」


それ以外、ほかに誰が!
あ、けどお姉さまも前田かも? いやいや、そうじゃなくて!


「なに?」

「あっち向いてください!」

「あっち?」

「向こうです!」

「どこ向いても鏡に映ってるけど?」


な、なんですって!?


「ひっ!」


かなりマジだ。
鏡の中で前田さんと目が合った。


「アツ、あんたも川上の代わり。着替えてらっしゃい」

「イエッサー!その言葉待ってました!」

「早くして」

「ヘイ!」


腰を上げた前田さんは髪をかきあげながら奥のほうへ消えていく。ホッと胸を撫で下ろした。

姐さんグッジョブすぎる!
もう、こうなったら素早く脱いでやる。

なんだかわけのわからないテンションと前田さんがいなくなったことに安心し、お姉さまの言うとおりに下着になった。

それからビスチェと呼ばれるもので体を締め付ける。でもって下はツンツルてんの肌触りがいいショーパンみたいなペチコート。

ガーターストッキングを穿き、胸は寄せては上げられ、さらにはパッドまで。


「——うわ」


これ誰の胸よ?みたいなゴージャスな仕上がり。
だけどここまでくれば、もう服を着た気分。ようやく息を吐き出した。


「これ消さないとね」

「……あ」


ヘアメイクらしき人に声を掛けられる。
見ればキスマークだ。

どうしよう。
目立ってるじゃん。
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