(A) of Hearts
「あ、あの…っ!」
てかここどこ!
まさかラブホ!?
でも入ったことないからわかんない!!
「自分の底ぐらい知っとけよ」
「——え?」
「これから秘書として会食などに同行する機会も増える。そこがどんなくだけた場であろうとも飲みすぎるなよ」
「も、申し訳ございません」
服は着ている。
とくに変わったところはない。
ただ場所がわからないのと、芦沢さんの言葉遣いが違うのと、それから煙草を吸っていること。
「——館野千尋」
「はい!」
「秘書業務を、いくつかあげてみろ」
そして芦沢さんはソファーへ腰を下ろし煙草を揉み消した。
上はシャツ一枚でネクタイは外してる。
わたしはというとベッドの上で、ほぼ正座状態。
「専務が気持ちよくスムーズに仕事できるようサポートさせていただくのが、わたしの仕事だと思います。いわば裏方ですね」
ふんと鼻を鳴らす芦沢さん。
さっきとキャラが違うし。てか、違いすぎる……っっっ!
う。
頭に響く。
ひーびーくー。
「よく知ってるじゃないか」
「——じつは、この2日。秘書について調べてました」
もう暇があれば秘書のあれこれをくまなく調べたんだから。勤務中にだけど。