(A) of Hearts

「それでこれか?」


わわわ。
たしかに…。


「——返す言葉もございません」


全然覚えてないよ。
なにがどうなってこうなったの。


「先が思いやられるな」

「弁解の余地もありません」


ひたすら頭を下げる。
だけど頭がぐわんぐわんするし目も回る。


「お茶汲み、コピー、電話対応、スケジュール管理、郵便や名刺の整理と管理。いわば雑用だらけ。けれど秘書の失敗は俺の失敗になる」

「心得ております」

「ほんとかよ」


そして新しい煙草を取り出す芦沢さん。
そとはまだ暗い。

部屋の中は間接照明が4つ。
それしか明かりがついてない。

どれも同じ円柱タイプの細いもので、それが部屋の四隅に置かれていた。そこから放たれるぼんやり柔らかい光が、まるで蝋燭の火のように暖かい。

利用したことはないけれど、直感的にここはラブホじゃない。だけどホテルでもなさそうだ。

どこだろ。
いま何時?
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