(A) of Hearts
わたしとヒロは家が隣同士だった。
お互いの家を行き来する仲で。
5歳のとき渡米したわたしにとって、周りの環境があまりにも変わりすぎてしまい。たしか見かねたママがヒロに面倒を見てくれるように頼んだんだよね。
当時ヒロは11歳だったかな。
最初のうちはとても優しくて、英語を教えてくれたり勉強を見てくれたり。一緒にお風呂も入ったし一緒に寝ていた。
だけどある日、急にヒロが冷たくなって。
わたしのことが嫌いだって、すごく怒ってた。
臭いから俺のベッドで寝るなって。
『出て行けよ』
"やだやだ!あっかんべーだ"
『ちぃ!!!』
"だってお布団からヒロの匂いがするもん。いい匂い。おやすみー"
『もう帰れよ。つか、うち来んな』
"なんでー"
『ちぃが寝たあと布団干さないと寝れないぐらい臭くなるから』
"臭くなるの?"
『俺が寝れなくなる』
"ほんと!?"
『それに生意気』
"わたしが寝たらヒロが寝れなくなるの?"
『——呼び捨てにするな。いまも臭くて吐きそう』
"……ヒロ"
『ちぃなんて大嫌いだ。くさいから近寄るな』
懐かしい記憶。
わたしが寝たら異臭がすると言ったヒロ。
どこでもすぐ寝るから匂いが残って迷惑だと眉を寄せて怒鳴ったヒロ。