(A) of Hearts
でも睡眠も大事。
とはいえ、この状態で、なんで寝れるの?
「芦沢さん!」
寝息は乱れることなく。
起きる気配もない。
時計に目をやれば、いま3時半。あと1時間半の辛抱。
「ン」
「!!!?」
ちょっと!?
動かないでくれる?
さ、酸素が足らないんだけど?
「——く、くるしッ」
もお、やっばい!
息苦しいと思ったら呼吸を止めていた。
こんなのがあと1時間半も続くだなんて。先が思いやられてしまう…。
「……」
ゆっくり息を吐き出して、それから何度か深呼吸。だけど変わらず目を閉じたままの芦沢さん。
「ちょっと芦沢さん、手を」
どけてほしいんですけれど。
重いんです。
「あの、」
重い。
それに窮屈だし。
「すみません、ちょっと。手をどけていただきたいです」
「……」
信じられない。
よくこんな状態で寝られる。
だけどいくらなんでも、この状態はマズくない?
だって婚約者がいるのに!
「失礼いたしますよ? この手をですね? どけてくださいっ!てばっ」
わたしの体に圧し掛かっている左腕を掴むと、そのまま芦沢さんはごろんと寝返りをうって反対側を向いた。