(A) of Hearts
「外では吸わないのですか?」
「プライベートと仕事をキッチリ分けたいだけ。見習っていいぞ」
目を細め、ふわりと煙を吐き出した。
「なんだ?」
「いえ?」
「ヘンなやつ」
そしてこれが最後とばかりに勢いよく煙草を吸い込み、それを灰皿に押し付ける。
「行くぞ?」
「——あ、はい!」
なんだか、わたしおかしい。
芦沢さんの、なんてことないちょっとした仕草に思わず目を奪われてしまう。
「腹減ったな。朝マックでも買ってくか」
「そうですね」
「車ん中、汚すなよ」
わたしの少し前を歩く芦沢さんがピタリと足を止め、振り返りそういった。
「はあい」
「返事は短くな」
「はい」
「——ぶ」
なんだかな。
ドキドキしちゃってる。
この朝の澄んだ空気にも、芦沢さんの声にも、それから芦沢さんの隣にも。