(A) of Hearts
ジャックのハート
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ドライブスルーの件から二週間経った。
あの日わたしは芦沢さんに家まで送ってもらい、それから掻き毟るように頭を洗い、抜け落ちた毛の量にちょっと後悔して、そのあと出社した。
そしてまるでなにごともなかったかのように一日がはじまり、芦沢さんにタクシーで家まで送ってもらったという言葉に友香さんは疑うこともなく、その日を終えた。
そして今日を迎える。
芦沢さんはというと、あの2日後にニューヨークに帰ってしまったので顔を合わせていない。
「———たとえばですよ!!?」
「だからなによ? 早く本題言ってよね」
ただいま友香さんとランチ中。
明日からはもうこんなふうに一緒にできないかと思うと凄く寂しい。
パスタをフォークに絡めつつ、これでもかってほど盛大な溜息を吐き出した。
辞令が発表されて、わたしは晴れて秘書に。
「ちょっとチー!?」
「——ああ友香さん。すみません、ちょっと黄昏てました」
「たとえばなに!?」
「へ?」
「さっきの続き。そこで話を止めたでしょ!?」
聞きたいことがあった。
だけどどう切り出していいのかわからない。
いい大人の男女が一緒の布団で寝るってのは、どういうシチュエーションでありえることなのだろうなって
いま思い出しても——。
てかさ? あの日のことが、なんか全然頭から離れてくれない。