(A) of Hearts

「なにちょっと!!? まさかオトコできたとか?」

「違いますし」

「なーんだ」

「わたしに彼氏ができたなら、まず友香さんに報告しますってば」

「うっそ、たのしみー」


やっぱり秘書と上司ってことを差し置いたとしても婚約者のいる芦沢さんが、あんなことしちゃいけないと思う。だけど、あれって、世間でいえば"あんなこと"とはいわないのかな。

うーん…。
どうなんだろう。

ドライブスルーの件といい——


「あ、そだ。あーんってするシチュエーションは、どんなときです?」

「あーんって?」

「あーんです。こうやって、あーん」


フォークに巻き取ったパスタを友香さんの口の前まで持っていった。


「なんの真似?」

「さあ?」


もしかして芦沢さんって軽い人なのかな。それともアメリカンナイズされてるとか。


「ねえチー?」

「はい?」

「あんたカワイイかも!」

「——かも?」

「カワイイー!!」

「なんですか急に…っ!」


そんなこんなで、なんだかんだと盛り上がって話していると、わたしの携帯が鳴った。

表示された名前は芦沢さん。


「誰?」

「専務です」

「早速かあ。いつ帰国したの?」

「たしか明日のはずですけれど…。てか、すみません。電話出ますね?」

「そんなの当たり前でしょ」


そして着信を押した。


「お疲れさまです」

『突然悪いな。いま羽田に着いたから連絡入れた』


え、羽田?
うそでしょ?
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