(A) of Hearts
あああああああ…。
また、ずしんときた。
急にわたしの居場所が、どこにもなくなってしまったような気分。
「はあ」
溜息も出るって話だよ。
依然と違って、これからは私服だしさ。
一段と疎外感を感じてしまうかもしれないな。
「ひぃ!!!!!」
び、びびびっくり!
突然ドアが開いた。
芦沢さ、じゃなくて専務のお帰りだ。
「お、いたのか」
「ししし失礼いたしました。急にドアが開いたので驚いてしまって」
「こっちがびっくりだ」
「申し訳ございません」
ああ。
いまので寿命が15時間は縮まった。
それぐらいの驚きだよ。
「あー、疲れた」
「すぐにお茶をお持ちいたします」
「要らない」
「ではコーヒーを」
「要らないって」
そしてデスクに座った芦沢専務。
今回のことで社長が日本にある同系列のグループ会社を纏めるさらに偉い人になってしまったので、実質は富田副社長が社長という形になる。
それからこれはここだけの話なんだけれど、M&Aプロジェクトも絡んでいた。つまり、うちの会社はいまいろいろ危機なのだ。
下手したら、うちよりさらに大手の外資企業の傘下になり兼ねない状態。そこで抜擢されたのが芦沢さんなのである。