(A) of Hearts

あああああああ…。
また、ずしんときた。

急にわたしの居場所が、どこにもなくなってしまったような気分。


「はあ」


溜息も出るって話だよ。
依然と違って、これからは私服だしさ。
一段と疎外感を感じてしまうかもしれないな。


「ひぃ!!!!!」


び、びびびっくり!
突然ドアが開いた。
芦沢さ、じゃなくて専務のお帰りだ。


「お、いたのか」

「ししし失礼いたしました。急にドアが開いたので驚いてしまって」

「こっちがびっくりだ」

「申し訳ございません」


ああ。
いまので寿命が15時間は縮まった。
それぐらいの驚きだよ。


「あー、疲れた」

「すぐにお茶をお持ちいたします」

「要らない」

「ではコーヒーを」

「要らないって」


そしてデスクに座った芦沢専務。

今回のことで社長が日本にある同系列のグループ会社を纏めるさらに偉い人になってしまったので、実質は富田副社長が社長という形になる。

それからこれはここだけの話なんだけれど、M&Aプロジェクトも絡んでいた。つまり、うちの会社はいまいろいろ危機なのだ。

下手したら、うちよりさらに大手の外資企業の傘下になり兼ねない状態。そこで抜擢されたのが芦沢さんなのである。


< 48 / 222 >

この作品をシェア

pagetop