(A) of Hearts
東京駅で待ちあわせ、そして新幹線に乗り込んだ。
朝早いから空いているかと思ったけれど、指定席は埋まっていてビックリ。
平日なのもありビジネスマンばかり。
これなら在来線のほうが少ないかも? そりゃないか。
だけど、みんな働き者だなあ。
負けてなんていられないっ!
「拳握ってるけど、誰か殴りにでもいくのか?」
「がんばろう。負けてはいられないと思ったんです」
「誰に」
「ここに乗ってるみんなにです」
「せいぜい負けないよう頑張ってください」
そして新聞を開ける芦沢さん。
株価のページを見ている。
いまひっそりと進んでいるM&Aプロジェクトの流れでもチェックしているのかな。
それにしても、この大変な時期に専務就任だなんて。お偉いさんたちは一体なにを企んでいるのだろう。
そしてわたしは一日の流れを再確認すべくメモ帳を広げつつ、スマホのスケジュールと照らし合わせた。11時に工場視察のあと、支社の瀬山さん、それから…
「くれ」
「へ……」
「おにぎり作ってきたんだろ」
ああ!
「どうぞ召し上がってくださいっ」
「お前テンション微妙。朝から疲れる」
「し、失礼しました」
なんかさ。
昨日あれこれ読んだせいで神経が高ぶっちゃって。