(A) of Hearts

「なんか館野が言うと軽いというか、ちょっと意味を履き違えてそうで怖いな」

「そんなことないですよ」

「大した自信だな」


そして肩をひょこっと上げ、ふたたび新聞へ目をやった芦沢さん。


「専務が昨日、こんなわたしを信頼し、いまのお気持ちをお話してくださったので、わたしもその信頼に応えたいと心から思ったのです」

「そうか」


本を読んで、やっと答えが出た気分。
すっきりくっきり。


「あ、ご結婚は6月ですよね?これから準備が大変なときですし、坂下さまとの時間が取れるよう出来る限りこちらでも調整いたしますね」

「その必要はない」

「なぜですか?」

「それも承知してくれてる」


へええ。
理解の域を超える。
だって女性に取って結婚式って人生の晴れ舞台なんじゃないの? もしかしたらバリバリのキャリアウーマンとかかしら。


「さすが専務に選ばれた方です。きっととても素敵な女性なのでしょうね」

「——なんか気持ち悪いな、お前」


またどこか呆れたようにそう言い、だけどそのあと笑った。

その笑顔、じつはヒロそっくり。
ヒロを思い出すとかのレベルじゃない。

優しかったときのヒロの笑顔。もっとこの顔が見たいと思ってしまう。
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