(A) of Hearts
「——あ」
「こんどはなんだ?」
「着信してます」
見ればわたしの携帯がバッグの中でチカチカ。
確認すれば社長秘書の第一秘書の今井さんからだ。
「今井さんから着信なので、このままデッキへ出ますね」
なんだか得体の知れない胸騒ぎがする。
心拍数半端ない中、深呼吸して着信を押した。
『今井です。いま新幹線の中かしら?』
「はい」
『確認していただきたいんだけれど、専務の14時から16時のスケジュールどうなってます?』
「——あ、はい。ええっと、11時に瀬山さま。20時に大野さまをはじめとする役員のみなさまと会食です」
『ああ、それ助かる。じつはお願いしたいことがあるの。名古屋のGホテルで開催されるパーティーに、社長が出席するはずだったのだけれど、さきほど奥様が接触事故でK病院へ運ばれて。社長は出席するとおっしゃってますが、わたしとしては専務が向かえる状態なら代わりにお願いしたいです」
な、なんですって?
緊急事態じゃん。
名古屋なら、大阪から向かえば1時間ほど?
「わかりました。すぐに折り返しいたします」
携帯を切ってそのままネット検索。
急いでいるのにも関わらず新幹線の中だと繋がりが悪くて足踏みしてしまいそう。
——キタ!
やっぱり大阪から名古屋までだと約1時間。