(A) of Hearts
「オッケーです。この方はいったい?」
「彼女とは直接面識がないけれど、知り合いの秘書。あとは藤崎に説明してあるから、そっちで聞いてくれ」
「かしこまりました」
「俺は大阪から直接Gホテルに向かう」
そこで一息ついた芦沢さん。
するとちょうど名古屋へ到着のアナウンスが流れた。
「なんだか大変なことになりましたね」
「そうか? 段取りならできたし、なにごともなければ時間的に余裕だ。降りる準備しとけよ」
「わかりました」
ちょっとヘコむ。
だっておそらく本来ならこんなこと、わたしが連絡を取り合うべきところ。
「申し訳ございません。わたしが名古屋の土地勘さえあれば、お手数をおかけしなかったのに」
「つぎ頑張れ」
「はい」
ほんとにね。
反省だ。
「——ところで藤崎とは、そういう関係?」
「そういうとは?」
そろそろ名古屋に着くらしく、バラバラと席を立ちはじめるひとが増えてきた。
「番号交換するほどの仲なのか?」
「何度かお食事に誘われただけです」
「そうか」
「あ、それじゃあ専務。そろそろわたしも降り口に向かいます」
「そうだな」