(A) of Hearts

「はい受付、四條です」


すると内線が鳴った。
出たのは友香さん。


「——いッ」


痛いじゃんッ!!!
ぽやっとしていたわたしの足を踏んづけた友香さんは、シレッとした顔で応対中。

そそくさとパソコンに目を移した。
ちらりと顔を上げる。

エレベーターに乗り込んだ芦沢さんは一度もこちらへ顔を向けることなく扉が閉まった。


「館野さん。総務部長から3番に内線です」


かしこまってお仕事ムードの友香さん。

だけどわたしに内線?
珍しい。


「——総務、塩見部長が、わたしにですか?」

「そうです」


一応わたしたち受付は総務部に所属してはいるので、塩見部長は直属の上司ではあるのだけれど、もう名前だけ所属しているって感じだからピンとこない。

最近の会社は受付なんて派遣や契約社員が多いと聞くのに、うちの会社はずっと正社員の役目なのだ。


「早く」

「あ、はい。ええっと、何番でした?」

「3番です」


ひ…っ!
助けてええ。
目が怖いってば。


「早く出てね」

「!!!?」


いだいーーッ(痛い)
また足踏まれた…っ!!!

そんなわたしの隣で涼しい顔をしてカウンターの下でピースアピールする友香さん。踏まれた足は痛いけれど、なんだかニヤけてしまう。男なら絶対惚れちゃう小悪魔。

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