(A) of Hearts

「せっかくのメイクが崩れちゃう」

「——はい」


情けないな、ほんと。
今度は高嶋さんのお勧めしてくれた店の服についた値札のゼロの数に驚いてしまって、なんかもう駄目。ちょっと止まらないよ。

どうしよ。


「おい館野」

「……」

「なにしてるんだ?」

「——専務」


どうしてここに。


「高嶋さんありがとうございます。あとはこちらでやりますので、前田には"助かった"と伝えてください」


情けなくも涙が止まらない。
場違いこの上ない。


「おい」

「——すみません」

「泣いてる暇ないぞ」

「はい」


わかってます。


「ああもう。ほら館野こっち向け」

「申し訳ございません。少々お待ちください。少し泣いたらスッキリしましたから」

「いいから、こっち向け」


すると目の前に芦沢さんの顔があった。


「なんでまた泣く」

「——ホ、ホッとして」

「バカか」


だってホントだもん。

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