(A) of Hearts

会食は会食で和気藹々としたムード。
パーティーで一緒だった方もいたから会話も弾んでいた。

てか芦沢さんって外面凄いんだけど。驚いちゃった。

そういえば最初会ったときの印象も、そんな感じだったっけ。


「てかさ。館野、お前、足大丈夫か?」

「え? ああ、これです?」


履き替える時間もなく新しいパンプスでずっと過ごしていたから靴ずれしてしまっている。

こういうの、ちゃんと気づいてくれるんだ。なんか流石だなあって思う。胃薬のときもそうだったし。


「ホテルに着いたら絆創膏でも貼っておきます———、って」


あれ。
ちょっと待って。
もしかしてチェックインなんてしてないんじゃないの??


「なんだ?」


ただいまタクシーの中。
時刻は23時過ぎ。

なんだか嫌な予感——。というか嫌な予感しかしない。


「あの、専務。あのですね? 非常に申し上げにくいことなのですが。チェックインって、まだですよね?」

「……」


ああ。
やっぱり。
だけどこれは仕方ない。
そんな時間なかったし。
だけどいままで気づかない、わたしがどうかと思う。


「ホテルに電話してみます」


そして携帯を取り出して電話をかけるも時間的にも難しいと思えた。だってシングルは急な入りもある。


「もしもし」


事情を手短に説明した。
あれこれあったものの、せっかくここまで順調だったのに。

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