(A) of Hearts
「お待たせいたしました館野です」
『あー、館野さん? すこし話があるので2階の会議室まで来てくれないかな』
ん?会議室?
なんで。どうして。
『すぐ来てください』
「——ですが部長」
『四條さんには伝えてあるから』
なぜか勤務中に呼ばれたわたし。
だけどさ、わざわざ話って、なんだろう。
「部長なんだって?」
「話があるから会議室に来てくれって」
「まさか愛の告白とかされたり?」
「えええ!?」
「冗談よ」
「やめてくださいよ…っ!」
冗談でもイヤ。
想像するのすら恐ろしすぎる。
だけど、なんの話かも想像できないじゃん!? しかも会議室ってなんなの?
オフィスラブなんて断固反対だ!
しかもその相手が部長だなんて切腹モノ!
「早く行きなさいよ」
「——はあい」
受付ということもあって、これまで食事を誘われたことは何度かあったけれど、それ以上のお付き合いはしていない。
正直言って彼氏になってほしいと思えるほどの人なんて、この会社にいないもん。
こんなの彼氏が社員の友香さんには、口が避けても言えないけどさ。
それに彼氏なんていらない。
だから、さっき言ったあれも本気。
だけどそれには、ちゃんと理由もあって。
いってみれば心の傷。
食事ぐらいなら大丈夫なんだけれど、なんだかそれ以上のお付き合いになると対応しにくいというか、反応が怖いというか。なんというか——。