(A) of Hearts

同い年なのかな。
婚約者とも知り合いっぽかったよね?


「前田のところは、いま水面下で動いてるM&Aプロジェクトの関連会社でもある。DWグループっていえばわかるだろ。そこ関連」

「――ということは、敵でしょうか?」

「いや、そうでもない」


どういうことだろう。
ひとまずメモメモ。


「そういや、館野も帰国子女なんだって?」

「そうです!これでも一応!」


わたしの声に短く笑った芦沢さんは、また欠伸をしながら溜息のような長い息を吐き出す。


「お疲れですね」

「チョコでも食お」


そしてポケットから、わたしがあげた一口チョコを取り出した。


「溶けてやがる」

「ああ、仕方ないですね。暖房ききすぎで暑かったですもん」

「要らない」

「へ…」

「返す」


な!?

だけどそれからフィルムをペキペキと剥がしてチョコを口の中に放り込んだ芦沢さん。


「これからはミント系のガムかドライハードのミンティア希望。よろしく」

「あ、はい。かしこまりました」

「——あま」

「チョコですから」

「甘いの苦手」

「疲れてるときは甘いのものがいいですよ?」

「それなら館野も食っとけよ」

「もうなくなっちゃいました」


すると専務が呆れたようにわたしを見て、それから小さくクスリと笑った。


「隠れ食い禁止。コソコソ食べても美味くないだろ?」

「——ですが」

「反論禁止」

「はい」

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