(A) of Hearts
そういやヒロも甘いものが苦手。
そんなことを、ふと思い出した。
やっぱりヒロと重ねているだけなのかな…。
そしてタクシーがホテルの前につく。
わたしたちは揃って降りた。
だけど、
「ぃ……っ!」
うあ。
やっばい!
「どうした?」
「いえ」
地面に足を下ろしてみると、まるで棒だ。いや棒というより、これはなんていうの?
とにかく浮腫んでパンパンのミチミチ。さらに靴擦れがなんていうかもう…。頑張れ、わたしの足。
「手続きしてきますね」
とりあえずは早くパンプスを脱ぎたい衝動に駆られ、急いでフロントに向かい手続き完了。ようやくキーを手にする。
「専務、こちらです」
振り返って声を掛ければ携帯を耳に押し当てていた。
あう。
仕方ない。
あともう少しの辛抱だ。
部屋までお送りしたら、すぐさまネットカフェを探さなきゃ。シャワーを浴びれるところが空いてたらいいな。
そして芦沢さんの電話が終わるのを待つあいだ、いただいた名刺と照らし合わせつつ今日出会った方の特徴を書き込んでいく。
5人目に取り掛かったとき、顔を上げればまだ電話中。お取り込み中?
ふたたび手帳に目を落としペンを走らせた。
声を落としているのか話し声は聞こえない。
「——だろ?」
あ。
思わず耳を傾けてしまう。
立ち位置が微妙に変わったので話し声が聞こえてきた。