(A) of Hearts

「さっき、もう寝るって。明日きちんと話しておくから」

「——ありがとうございます」


ここで感謝の言葉もなんか違う気がしたけれど、それしか思い浮かばず。


「酒でも飲むか?」

「早くお休みになってください。もう遅いです」

「風呂入ろっと」

「ど、どうぞっ!?」

「なんでキレてるんだか」

「キレてなどおりませんっ」

「はいはい」


そして芦沢さんはバスルームに消えた。わたしは盛大な息を吐き出す。

それからしばらくしてシャワーの音が聞こえた。

だけどさ。
なんでこんなことに?
わたしが悪いんだけど。

気持ちを新たに挑むつもりだったのにさ。またなんかヘンな方向へ向いてしまった気分だよ。

あああああああ、もおおおっっ!!
足も痛いし!
それに胸も痛い!!!!!!!

と、叫びたいよ。


——さてと。
どこで待機すればいいものかな。
とりあえず荷物下ろして。

それから、ええっと…。
絆創膏!

まずそれだよね。
だけどお風呂に入ってからのほうがいいかも。

いや待てよ?だってこれめちゃくちゃシミそうじゃん?

ホテルに備え付けのドレッサーの椅子へ腰を掛ける。そしてポーチの中から絆創膏を取り出した。


「あたたた」


かかとに絆創膏を2枚貼り付けた。
治るまでしばらく掛かりそう。
そして足をプラプラさせながら部屋の中を見渡してみる。シャワーの音は続いていた。
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