(A) of Hearts

どうしよ…。
シャンプーとコンディショナーはいつも使っているのを持ってきたし、これを使えばいいんだけれど。とりあえず想定外じゃん?

いつもはタオルドライしたあと、そのまま少しダラダラ過ごしてからドライヤーで乾かして寝る。でもドライヤーなんてしたら、うるさくて迷惑じゃんか。


「……」


普通にすればいいか。
芦沢さんだって普通だった。タンクトップに腰タオルだもん。

そして何度か深呼吸を繰り返してから服を脱ぎ、シャワーを捻った。


「!!!???」


ち、ちめたい!
びっくりした!!
だけど声は出さずにすんだっ!

グッジョブ千尋やればできる。

靴擦れはやっぱりすごくシミたけれど、そんなことも言ってられず。

いつもの香り、それに体が温まってくると気分も落ち着いて来るような気がした。

だけど早く終わらなくては。
芦沢さんがあのままバルコニーにいたら大変だ。

いつもよりは2割増しのスピードでシャワーを済ませ、いつもなら寝るときにはつけないブラをつけた。

窮屈この上ない。だけどこればかりは仕方ないわけで。なんだかなあ。


「……」


曇った鏡を手の平で擦ってみた。
パジャマなんだよね、わたし。
ま、いっか。

そしてドアを開けた。
すると小さい室内灯だけが灯る暗い部屋。

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