(A) of Hearts
「あれ?」
おかしいな。
どこ行ったんだろ?
あ。
すでにベッドへ横になっていた。
相当お疲れだったし欠伸も連発していたから即寝も頷ける。
ホッと胸を撫で下ろした。
起こさないよう細心の注意を払いつつ、タオルドライしながらドレッサーの前に腰を下ろし手帳を取り出す。
さっき途中までだったので寝る前に仕上げておこうと思った。それにまだ眠くない。
幸いにも小さいライトが手元を照らしている。難なく取り掛かれそうだ。
時刻はもうすぐ一時半。
芦沢さんの様子は、鏡越しでときどき確認した。寝返りも打たず静か。
息を潜めて作業を続行していたわたしも、だんだんこの空間に慣れてくる。欠伸がひとつ出た。
——寝るかな。
伸びをすれば途端に瞼が重い。時計に目をやれば、もう3時前だ。
芦沢さんへ目をやる。
いくら暖房の効いた部屋でも、タンクトップで寝るのはいかがなものかと。
「失礼いたします、よ」
布団が捲れて肩が寒そうだったので、それを直してから自分のベッドに潜り込んだ。
はあ…。温かいなあ。
お布団ふわふわだし。
だけど足は相変わらず痛い。
靴擦れもだけれど、ふくらはぎがすでに筋肉痛だよ。
ふあっと欠伸をひとつ。そして目を閉じる。
睡魔はすぐにやってきて、そのままわたしはストンと眠りの世界へ——。