(A) of Hearts

「——おやすみ」


そしてわたしのおでこに、なんだか柔らかくて温かいものが触れた。

居心地が良くて、気持ちよくて、どんどん薄れていく。だけど待って。だってせっかくヒロが夢に出てきてくれた。


「こら」

「やだヒロ」


待ってヒロ。
どこ行くの。


「——少しだけだからな」


わたしの布団の中にヒロが入ってきた。この感じ、なんかとても懐かしい。

いい夢だな。
醒めなきゃいいのに。

そしてヒロの胸に顔を埋める。


「臭い?」

「いや」

「よかった」

「臭いなんていってゴメン。ちぃは臭くなんてないから安心して寝ろ」


わたしを抱きしめ、ヒロがそう言った。
あのヒロが、こんなことするとは思えない。

やっぱり夢は、夢。

だけど、しあわせだな。
覚めなきゃいいのに。







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