優しい吐息
「別に、りかが嫌いになったんじゃない。それに逃げたっていうか、父さんが死んで、マジ何が起きたかわかんなくて、自分が嫌だった。」
「自分が、いや?」
「けじめだよ。それで、おじさんに……。」
祐太は近くにあった小さな岩に座ると手招きして私を隣に座らせた。
そして、優しく抱き締めるとこう言った。
「……学校にも秘密にしてって言った。一人前になって、りかのところに現れるはずだった。でも、まだだ。まだだった。」
「…………。」
潮風が磯の香りを運んでくる。
祐太がいなくて、死にたくなった。
祐太がいなくて、孤独だった。
「おじさん、秘密にしてた。俺に、りかがここで働いてるんだって。だから俺……。」
「……私、どんな祐太でもよかったのに。」
「へ?」
「バカじゃん……。」
私は祐太を抱き締めた。
ギュッと、優しく抱き締めた。
「じゃあな、りか。」
「へ?」
「行かなきゃいけない所、あんだ。」
「……また一人にするの?」
「……また会えるから。」
そういう祐太に撫でられたら、もう何も言う事ができなかった。手を伸ばしても、祐太には届かなかった。
“アー、アー、アー……。”