テンポラリーラブ物語
9
季節は初夏を迎え、ゴールデンウィークも過ぎた頃だった。
紀子が結婚準備にとりかかるために辞めてしまい、新しくアルバイトが数名加わった。
入って来た女の子達は純貴好みで、容姿、スタイル共にいい。
一ヶ月過ぎると今度はなゆみが教える立場となっていた。
「たかが一ヶ月でえらっそうにするなよ」
氷室がすれ違いざまに言った。
なゆみは通り過ぎていく氷室の背中に向けて、舌を出してささやかな反抗をする。
氷室はお見通しだと、クククと少しだけ肩を震わせて笑っていた。
そんな時、純貴がなゆみを呼んだ。
「斉藤さん、ちょっと」
「はい、なんですか、専務」
なゆみはすぐさま、態度を改めて駆け寄った。
「えーと、川野主任のリクエストもあって、斉藤さんに隣のビルの支店で働いてもらうことになりました」
「えっ、移動ですか?」
なゆみも突然のことにびっくりしたが、氷室もまた寝耳に水だった。
思わず問い質す。
「専務、川野主任のリクエストってどういうことだ」
「あっちもアルバイトが辞めちゃったから、少し慣れた子を回してくれって言われたんだ。アルバイトは新しく入ったばかりだし、ベテランの敷川さんが辞めてしまって、うちに残ってるベテランは上野原さんだけでしょ。彼女には新人を教え込んでもらわないといけないので、うちから出せるのは斉藤さんしかいないんだ」
氷室は川野の勝手なリクエストに露骨にむっとしてしまった。
なゆみは専務の命令なので、すぐさま受け入れた。
「はい、わかりました。いつから行けばいいですか」
「じゃあ、早速今から行ってくれるかい。こっちに置いてるタイムカードと荷物も一緒に持っていって下さい。これからずっと向こうって事になるので、こっちにはもう来なくてもいいですからね」
「はい。わかりました」
素直になゆみは従うも、氷室は受け入れられずに呆然としていた。
心の中は波立っていても、感情に表さないように必死で抑えている。
季節は初夏を迎え、ゴールデンウィークも過ぎた頃だった。
紀子が結婚準備にとりかかるために辞めてしまい、新しくアルバイトが数名加わった。
入って来た女の子達は純貴好みで、容姿、スタイル共にいい。
一ヶ月過ぎると今度はなゆみが教える立場となっていた。
「たかが一ヶ月でえらっそうにするなよ」
氷室がすれ違いざまに言った。
なゆみは通り過ぎていく氷室の背中に向けて、舌を出してささやかな反抗をする。
氷室はお見通しだと、クククと少しだけ肩を震わせて笑っていた。
そんな時、純貴がなゆみを呼んだ。
「斉藤さん、ちょっと」
「はい、なんですか、専務」
なゆみはすぐさま、態度を改めて駆け寄った。
「えーと、川野主任のリクエストもあって、斉藤さんに隣のビルの支店で働いてもらうことになりました」
「えっ、移動ですか?」
なゆみも突然のことにびっくりしたが、氷室もまた寝耳に水だった。
思わず問い質す。
「専務、川野主任のリクエストってどういうことだ」
「あっちもアルバイトが辞めちゃったから、少し慣れた子を回してくれって言われたんだ。アルバイトは新しく入ったばかりだし、ベテランの敷川さんが辞めてしまって、うちに残ってるベテランは上野原さんだけでしょ。彼女には新人を教え込んでもらわないといけないので、うちから出せるのは斉藤さんしかいないんだ」
氷室は川野の勝手なリクエストに露骨にむっとしてしまった。
なゆみは専務の命令なので、すぐさま受け入れた。
「はい、わかりました。いつから行けばいいですか」
「じゃあ、早速今から行ってくれるかい。こっちに置いてるタイムカードと荷物も一緒に持っていって下さい。これからずっと向こうって事になるので、こっちにはもう来なくてもいいですからね」
「はい。わかりました」
素直になゆみは従うも、氷室は受け入れられずに呆然としていた。
心の中は波立っていても、感情に表さないように必死で抑えている。