テンポラリーラブ物語

「斉藤さん、そろそろ休憩とってくれていいよ」

 そう言ったのは上野原ミナだった。

 側にはミナと仲がいい敷川紀子がいた。

 紀子は来年結婚が決まっている24歳の小柄な女性だった。

 この子も社長に採用され、年も近いし、古株のミナと1ヶ月の違いで入ってきたこともあり、結束が固い仲であった。

 本店はこの二人が中心になっていた。

 そこに週に何回かくるだけの専務が選んだアルバイトが数名いる。

 適当にみんなそれなりに仲良くはしていたが、この二人と他のアルバイトたちは傍から見ていても水と油のように思えた。

 それもそのはず、社長が採用した女の子と専務が採用した女の子は全く違った種類のタイプだった。

 そんな中でなゆみはまた第三の違ったタイプであり、氷室の目にはどこにも加えてもらえそうもなくいじめられるタイプだろうなと感じていた。

 なゆみが休憩に行けば、きっとこの二人はなゆみのことで何か言うのだろう。

 なゆみが席を外したあと、氷室は二人の会話に耳を集中してしまった。

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