テンポラリーラブ物語
2
月曜日の朝、なゆみはシャッターの前で千恵と一緒に主任の川野を待っていた。
「もうすぐ開店の時間なのに、川野さん遅いね」
千恵がなゆみと顔を合わせ、腕時計を見て時間を気にしていた。
「どうする、千恵ちゃん。もうこんな時間だよ。本店に行って報告してきた方がいいかな。私、行って来る」
なゆみが向かおうとくるっと向きを変えて走り出した時、歩いていた通行人にどーんと思いっきりぶつかってしまった。
「す、すみません」
猪のような突進だったので、なゆみはバランスを崩し、それを抱きしめるように受け止められていた。
「相変わらず、周りをしっかり見てないな、お前は」
なゆみが顔を上げればそこには氷室が立っていた。
一瞬の時が止まったようになゆみは固まってしまう。
「ひ、氷室さん!」
慌てて体勢を整え、ぴょんと跳ねるように後ろに下がった。
「お前は海老か」
「海老でもなんでもいいですけど、開店時間がもうすぐなのに川野さんが来られないんです」
「ああ、川野はクビだ」
これには千恵も驚きなゆみと一緒になって「えー」と声を上げていた。
それにびっくりして、通行人が何事かと振り返った。
「と、いうのは冗談。親戚に不幸があったみたいで、今日は休みだ」
悪びれもせずしれっとした顔で氷室は言った。
二人は声を上げて驚いたためにお悔やみを聞いても何も言えず、力尽きたように言葉を失っていた。
氷室は予備の鍵でシャッターを開けると、なゆみたちは急いで中に入り、そして着替えをさっさと済ませて開店の準備に慌てた。
「川野主任がいないので、今日は俺がここを担当する」
「えっ、本店は大丈夫なんですか?」
千恵が心配した。
その傍でなゆみは、突然の氷室との勤務に動揺して黙り込んでいた。
「あっちには専務がいる。俺がいなくても大丈夫だ。でもここは責任者が居ないと危なっかしいのが一名いるだけにな……」
氷室はちらりとなゆみに視線を落とした。
嫌味またはからかいがあっただろうが、なゆみは何も答えなかった。
寧ろ目を逸らし、避けてしまった。
月曜日の朝、なゆみはシャッターの前で千恵と一緒に主任の川野を待っていた。
「もうすぐ開店の時間なのに、川野さん遅いね」
千恵がなゆみと顔を合わせ、腕時計を見て時間を気にしていた。
「どうする、千恵ちゃん。もうこんな時間だよ。本店に行って報告してきた方がいいかな。私、行って来る」
なゆみが向かおうとくるっと向きを変えて走り出した時、歩いていた通行人にどーんと思いっきりぶつかってしまった。
「す、すみません」
猪のような突進だったので、なゆみはバランスを崩し、それを抱きしめるように受け止められていた。
「相変わらず、周りをしっかり見てないな、お前は」
なゆみが顔を上げればそこには氷室が立っていた。
一瞬の時が止まったようになゆみは固まってしまう。
「ひ、氷室さん!」
慌てて体勢を整え、ぴょんと跳ねるように後ろに下がった。
「お前は海老か」
「海老でもなんでもいいですけど、開店時間がもうすぐなのに川野さんが来られないんです」
「ああ、川野はクビだ」
これには千恵も驚きなゆみと一緒になって「えー」と声を上げていた。
それにびっくりして、通行人が何事かと振り返った。
「と、いうのは冗談。親戚に不幸があったみたいで、今日は休みだ」
悪びれもせずしれっとした顔で氷室は言った。
二人は声を上げて驚いたためにお悔やみを聞いても何も言えず、力尽きたように言葉を失っていた。
氷室は予備の鍵でシャッターを開けると、なゆみたちは急いで中に入り、そして着替えをさっさと済ませて開店の準備に慌てた。
「川野主任がいないので、今日は俺がここを担当する」
「えっ、本店は大丈夫なんですか?」
千恵が心配した。
その傍でなゆみは、突然の氷室との勤務に動揺して黙り込んでいた。
「あっちには専務がいる。俺がいなくても大丈夫だ。でもここは責任者が居ないと危なっかしいのが一名いるだけにな……」
氷室はちらりとなゆみに視線を落とした。
嫌味またはからかいがあっただろうが、なゆみは何も答えなかった。
寧ろ目を逸らし、避けてしまった。