テンポラリーラブ物語
 なゆみの英会話の先生が、店の前を横切ったので、なゆみが咄嗟に声を掛けていた。

 名前は横文字のショーンだが、見かけはアジア系であまり外国人にみえない。

 背も低く、英語を話さなければ日本人として間違えられそうな風貌だった。

 ショーンはなゆみに会えて嬉しいのか色んな質問をしていた。

 氷室は鼻でふんとあつらい、くだらないと言いたげにそれを見ていたが、なゆみが他の男と、例え英語で会話をしていてもどこか落ち着かない。

 ショーンが親しさを超えた慣れなれしさで、なゆみと接してる態度は尚更気に食わなかった。

「氷室さん、そろそろお昼の休憩にどうぞ」

 千恵が気を遣って横でそっと囁いた。

「いや、俺は一番最後でいい。倉石さん先にどうぞ」

「私は今この伝票をまとめてしまいたいし…… だったら、サイトちゃん。よかったらお昼先にとって」

「えっ、は、はい。わかりました」

 なゆみはショーンにも何か伝えている。

「それじゃお先にお昼取らせて頂きます」

 なゆみは氷室に一礼すると、あの例の大きなリュックをもって小走りにショーンの元へ駆けていく。

 マスコットのキティも元気に跳ねていた。

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