テンポラリーラブ物語
第一章 ビギニング
1
支店周りをした後、閉店後の本店に戻ってきた氷室コトヤが、少しだけ開いているシャッターを潜ろうと体を丸めて中に入って行った。
明々と電気はついているが、陳列には布がかけられ、全てが終了した雰囲気に包まれていた。
誰も人が見当たらなかったが、その奥には控室があり、そこに人が居る気配はしていた。
そこへ近づき、その中にあるタイムカードを押そうと、控え室のドアノブに手をかけた時だった。
ふと耳にした音に動きが止まった。
何かいかがわしい、変な喘ぎ声が聞こえてくる。
控え室は従業員が休憩を取ったり、着替えたりする場所だが、テレビやDVDなどという設備は一切ない。
すぐに状況を悟った氷室は「はあー」と呆れたため息を漏らして、ドア越しに苛立った声を発した。
「専務、俺のタイムカード押しておいて下さいよ! それじゃお先に失礼します」
「オッケー、コトヤン、お疲れ~、また明日な」
意外にも、あっけらかんとした受け答え。
中で何が起こってるかばれていても、この専務と呼ばれる男はたじろぐこともなかった。
そして、氷室コトヤをコトヤンと親しく呼ぶのも、この二人は高校時代の友達同士だったからであった。
再び、控室の中から、先ほどよりもわざとらしい声を出して、氷室をからかう。
どうぞ、お好きにとばかりに、氷室は呆れ顔になって、奥で行われている行為を尻目に再びシャッターの下を潜って出て行った。
この日のお相手はどの従業員だろうと思ってみたところで、誰が専務の餌食になっても不思議はなかった。
支店周りをした後、閉店後の本店に戻ってきた氷室コトヤが、少しだけ開いているシャッターを潜ろうと体を丸めて中に入って行った。
明々と電気はついているが、陳列には布がかけられ、全てが終了した雰囲気に包まれていた。
誰も人が見当たらなかったが、その奥には控室があり、そこに人が居る気配はしていた。
そこへ近づき、その中にあるタイムカードを押そうと、控え室のドアノブに手をかけた時だった。
ふと耳にした音に動きが止まった。
何かいかがわしい、変な喘ぎ声が聞こえてくる。
控え室は従業員が休憩を取ったり、着替えたりする場所だが、テレビやDVDなどという設備は一切ない。
すぐに状況を悟った氷室は「はあー」と呆れたため息を漏らして、ドア越しに苛立った声を発した。
「専務、俺のタイムカード押しておいて下さいよ! それじゃお先に失礼します」
「オッケー、コトヤン、お疲れ~、また明日な」
意外にも、あっけらかんとした受け答え。
中で何が起こってるかばれていても、この専務と呼ばれる男はたじろぐこともなかった。
そして、氷室コトヤをコトヤンと親しく呼ぶのも、この二人は高校時代の友達同士だったからであった。
再び、控室の中から、先ほどよりもわざとらしい声を出して、氷室をからかう。
どうぞ、お好きにとばかりに、氷室は呆れ顔になって、奥で行われている行為を尻目に再びシャッターの下を潜って出て行った。
この日のお相手はどの従業員だろうと思ってみたところで、誰が専務の餌食になっても不思議はなかった。