テンポラリーラブ物語
6
氷室は同じビルにある居酒屋で純貴と酒を交わす。
会社を出れば二人は友達同士だった。
忙しく調理する店員の姿をカウンター越しに見ながら、二人はジョッキを握って生ビールをぐっと飲んでいた。
氷室の息がふーと漏れる。
ビールを飲んで満足した気持ちではなく、どこかやるせなく不意に漏れた嘆きごとのように聞こえた。
「コトヤン、最近益々ふてぶてしくなったね。どうしてもっと楽しくしないんだ。俺みたいに気に入った子がいたら、声かけてみたらいいじゃないか。コトヤンは高校生のときは女の子に良くモテては俺よりプレイボーイだったろ」
「そっか? 忘れた」
「お前、大人になって性格変わったな。あれだけ野心に溢れていたのに、なんだこの差は?」
「だからそういうのを大人になったって言うのさ。もうガキじゃあるまいし、粋がってみても虚しいだけさ」
氷室はまたビールを飲んだ。
純貴は料理をつまみながら、聞いているようで聞いていなかった。
「ところで、あの新しく入った子。元気で気持ちいいけど、なんか女っ気ないな。高校生みたいでガキっぽい」
女を品定めする癖のある純貴が言いそうなことだった。
氷室も適当に聞いていた。
「まあ仕事はちゃんとしてくれそうだから、いいんじゃないか。どうせ8月一杯までだろ。あっという間に去っていくよ。そしていずれは俺たちの記憶からも消去される」
「まあ、そうだな。それにしても本店はもう少し色っぽいの入れないと、正社員の上野原と敷川は味気ないな。その点、アルバイトの美穂はなかなかだぞ」
「それが昨日の相手か」
「さあ、なんのことですか」
わざとらしくとぼけているが、ばれているのは本人も自覚していた。
そしてビールを一飲みして、その話は終わりだとリセットしたかのように見えた。
氷室は同じビルにある居酒屋で純貴と酒を交わす。
会社を出れば二人は友達同士だった。
忙しく調理する店員の姿をカウンター越しに見ながら、二人はジョッキを握って生ビールをぐっと飲んでいた。
氷室の息がふーと漏れる。
ビールを飲んで満足した気持ちではなく、どこかやるせなく不意に漏れた嘆きごとのように聞こえた。
「コトヤン、最近益々ふてぶてしくなったね。どうしてもっと楽しくしないんだ。俺みたいに気に入った子がいたら、声かけてみたらいいじゃないか。コトヤンは高校生のときは女の子に良くモテては俺よりプレイボーイだったろ」
「そっか? 忘れた」
「お前、大人になって性格変わったな。あれだけ野心に溢れていたのに、なんだこの差は?」
「だからそういうのを大人になったって言うのさ。もうガキじゃあるまいし、粋がってみても虚しいだけさ」
氷室はまたビールを飲んだ。
純貴は料理をつまみながら、聞いているようで聞いていなかった。
「ところで、あの新しく入った子。元気で気持ちいいけど、なんか女っ気ないな。高校生みたいでガキっぽい」
女を品定めする癖のある純貴が言いそうなことだった。
氷室も適当に聞いていた。
「まあ仕事はちゃんとしてくれそうだから、いいんじゃないか。どうせ8月一杯までだろ。あっという間に去っていくよ。そしていずれは俺たちの記憶からも消去される」
「まあ、そうだな。それにしても本店はもう少し色っぽいの入れないと、正社員の上野原と敷川は味気ないな。その点、アルバイトの美穂はなかなかだぞ」
「それが昨日の相手か」
「さあ、なんのことですか」
わざとらしくとぼけているが、ばれているのは本人も自覚していた。
そしてビールを一飲みして、その話は終わりだとリセットしたかのように見えた。