テンポラリーラブ物語
休憩時間に、なゆみは手帳を持って本館へ足を運んだ。
「お疲れ様です」
「あっ、サイトちゃん。どうしたの」
ミナが笑顔で寄って来てくれた。
なゆみは手帳を差し出し、住所を書いてと催促する。
「向こうから絵葉書だすからね」
ミナは喜んで自分の住所を書き込んだ。
氷室はその間、例のごとくコンピューターに向かってデーターを打ち込んでいた。
なゆみが来ているとわかっているのに、愛想すら持ち合わせてない。
仕事が忙しいフリをしては、カチャカチャとキーボードを叩く手を一層早くした。
その態度は、初めてなゆみが働いた日に出会った氷室と変わらなかった。
ミナが書き終わると、なゆみは力を込めて手帳を握り締め、勇気を出して氷室の側に立った。
「お疲れ様です。お仕事中すみません。あの、ここに住所書いてもらえませんか」
氷室はキーボードを叩いていた手を止め、なゆみに視線を向けた。
冷静を装っても、瞳は深くなゆみを捉えていた。
なゆみがとても遠くに行ってしまったと悲しく思いながらも無理に微笑んだ。
「明日が最後の日だったな」
そう呟きながら、手帳を受け取り、住所を書き始めた。
氷室の字は男性の字とは思えないほど達筆だった。
建築の細かなデザインをする人は、字にも同じようにきっちりと設計された形が宿るのかもしれない。
その字を見れば、氷室のしっかりとした真面目な人柄が浮かんでくるようだった。
あの大きな手からこんな繊細な美しい字を書く氷室に、なゆみは暫し見とれてしまった。
書き終わった後、氷室はその手帳を返した。
「お疲れ様です」
「あっ、サイトちゃん。どうしたの」
ミナが笑顔で寄って来てくれた。
なゆみは手帳を差し出し、住所を書いてと催促する。
「向こうから絵葉書だすからね」
ミナは喜んで自分の住所を書き込んだ。
氷室はその間、例のごとくコンピューターに向かってデーターを打ち込んでいた。
なゆみが来ているとわかっているのに、愛想すら持ち合わせてない。
仕事が忙しいフリをしては、カチャカチャとキーボードを叩く手を一層早くした。
その態度は、初めてなゆみが働いた日に出会った氷室と変わらなかった。
ミナが書き終わると、なゆみは力を込めて手帳を握り締め、勇気を出して氷室の側に立った。
「お疲れ様です。お仕事中すみません。あの、ここに住所書いてもらえませんか」
氷室はキーボードを叩いていた手を止め、なゆみに視線を向けた。
冷静を装っても、瞳は深くなゆみを捉えていた。
なゆみがとても遠くに行ってしまったと悲しく思いながらも無理に微笑んだ。
「明日が最後の日だったな」
そう呟きながら、手帳を受け取り、住所を書き始めた。
氷室の字は男性の字とは思えないほど達筆だった。
建築の細かなデザインをする人は、字にも同じようにきっちりと設計された形が宿るのかもしれない。
その字を見れば、氷室のしっかりとした真面目な人柄が浮かんでくるようだった。
あの大きな手からこんな繊細な美しい字を書く氷室に、なゆみは暫し見とれてしまった。
書き終わった後、氷室はその手帳を返した。